教養書のすすめ

-読書でより良い人生を生きるために-

「国民」という名の幻想――『レイヤー化する世界』

 十九世紀から二十世紀にかけて確立してきた資本主義という体制が成熟に達し、すでにあちこちで消化不良を引き起こしている状態であるというのは、これまで読んできた本でも指摘されていることである。資本主義の本質は、世界をウチとソトに分けたうえで、富を無限にソトからウチへと吸い上げていくことであるが、その境界線が曖昧になってきているがゆえに、富を内側に溜め込むことそのものが困難になっている、というのが主だった論調だ。インターネットの普及や企業のグローバル化戦略が、さらにその傾向に拍車をかけることになったが、これは見方を変えるなら、地球規模で富が均質化してきている、ということでもある。

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