教養書のすすめ

-読書でより良い人生を生きるために-

その思想はいまだ遠く――『現代のヒューマニズム』

 ヒューマニズムとは何なのか、ということをあらためて考えたとき、私にとっての「ヒューマニズム」とは、その言葉の響きだけは知っているものの、それが指しているもの、意味するものについて、それほど深く考えることもなく今に至っている、ということに気づかされた。

 それまで漠然と「人道的であること」「人にやさしい」といったイメージしか持ち合わせていなかったヒューマニズムには、たしかに人道主義としての側面もあるが、その背景には、人間性というものが多分に抑圧されてきたこれまでの長い歴史がある。一般的なヒューマニズムにおける抑圧の対象としては、キリスト教の精神がそれにあたる。神の存在を至上とするキリスト教の教義を教え広める教会は、基本的に信者である人間に神の存在を疑問視することを許さないものだ。

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